2020/12/02 11:37


普段は、オシャレにキメている方も

会社では、おそらく役員かなにかしらの立場ありそうな方も

年代も年収も職種も肩書きも違う人たちが裸の上に 

パジャマ上下のようなガウンを着せられ 同じ空間で、おとなしく次の順番を待つ。

健 康 診 断。




「はい、息を吸ってー。大きく吐いてー。」


おなかが膨らむのがバレない程度に小さく息を吐き出す。



「はい。もう少し力を抜いてくださいねー。」と、看護師に促される。


腹部の脂肪の塊には、忍耐という魂は宿っていない。


「まだ、力が入っていますねー」と、諭されあきらめた。



注射よりも、バリウムを飲むことよりも、

ここ数年は、腹部の周りをメジャーで図られることが耐え難い。

 

家に帰ると嬉しそうに「14週目だって」と、

ほんの少し膨らみはじめたおなかをさすりながら妻が言う。

「次は、女の子かなぁ」。同じおなかでも違う様相を呈している。

 

前回の健康診断から、大幅な体重増を実感していたが、

届いた診断書には、やや太字で「肥満」と書かれている。

太字だったことはさておき、肥えて満ちる

肥大し過ぎて満タンです。

という二文字を見て、やや落ち込んだ。

当然の報いだが、響きが新鮮なうちになんとかしたい。


 

たまに着るツーパンツスーツのズボンは、

当たり前だが、ワンもツーもどちらも等しく苦しい。



フロントホックから解放された下腹部には、

妊娠線のようなしめつけ痕が残っているが、

こちらのおなかには、新たな生命は宿っていない。



スーツから外したベルトが今日も弧を描いて歪んでいる。


 悲哀
 三浦シンディ
 (北海道新聞 せせらぎ エッセイ 初稿 下書きより抜粋)


昔は、Sサイズがちょうど良かったのに。数年前から無難な Mサイズ。

最近では、安パイのLサイズを選ぶようにしています。

サイズ選びは、慎重に。